核燃料デブリの試験的な取り出し 直前で延期
東京電力は2024年8月22日、福島第一原子力発電所の事故からおよそ13年半で
初めてとなる核燃料デブリの試験的な取り出しに2号機で着手する予定でしたが、
取り出し装置の取り付けにミスがあり、直前で延期したと発表しました。 今後、
ミスが起きた原因を確認するとしていて、再開の時期は決まっていないという
ことです。

初めてとなる核燃料デブリの試験的な取り出しに2号機で着手する予定でしたが、
取り出し装置の取り付けにミスがあり、直前で延期したと発表しました。 今後、
ミスが起きた原因を確認するとしていて、再開の時期は決まっていないという
ことです。

福島第一原発の1号機から3号機では、2011年3月の事故で溶け落ちた核燃料と
周囲の構造物が混ざり合った核燃料デブリがあわせておよそ880トンあると
推定され、極めて強い放射線を出し続け容易に近づけないことから、その
取り出しは「廃炉最大の難関」とされています。
周囲の構造物が混ざり合った核燃料デブリがあわせておよそ880トンあると
推定され、極めて強い放射線を出し続け容易に近づけないことから、その
取り出しは「廃炉最大の難関」とされています。
東京電力は22日、事故からおよそ13年半で初めてとなる核燃料デブリの試験的な
取り出しに2号機で着手するため、午前7時半前から準備作業を始めましたが、
取り出し装置の取り付けにミスがあり、直前で延期したということです。
取り出しに2号機で着手するため、午前7時半前から準備作業を始めましたが、
取り出し装置の取り付けにミスがあり、直前で延期したということです。
取り出し装置は伸縮する細いパイプ状のもので、格納容器の中まで後ろから別の
パイプで押し込む仕組みになっていますが、装置を格納容器内につながる配管の
手前まで進めたところで、5本ある押し込みパイプの順番が誤っていることに
作業員が気づき、午前9時前に作業を中断したということです。 押し込み用の
パイプは作業開始前の先月28日までに並べられていたということです。
パイプで押し込む仕組みになっていますが、装置を格納容器内につながる配管の
手前まで進めたところで、5本ある押し込みパイプの順番が誤っていることに
作業員が気づき、午前9時前に作業を中断したということです。 押し込み用の
パイプは作業開始前の先月28日までに並べられていたということです。
東京電力は、今後、ミスが起きた原因を確認し、対策をとったうえで再開する
方針で、時期は決まっていないということです。 東京電力の担当者は「状況に
よっては原因の洗い出しに時間がかかる可能性はあるが、なるべく時間をかけずに
進めていきたい」と話していました。
方針で、時期は決まっていないということです。 東京電力の担当者は「状況に
よっては原因の洗い出しに時間がかかる可能性はあるが、なるべく時間をかけずに
進めていきたい」と話していました。
核燃料デブリの取り出しは、2021年までに始めるとした当初の計画から3年遅れて
いますが、政府や東京電力は、デブリの性質や状態などに関するデータは、
本格的な取り出し工法の検討など、今後の廃炉を進めるうえで欠かせない
としていて、成否が注目されます。
いますが、政府や東京電力は、デブリの性質や状態などに関するデータは、
本格的な取り出し工法の検討など、今後の廃炉を進めるうえで欠かせない
としていて、成否が注目されます。
装置の取り付けミスとは
取り出し装置は伸縮するパイプ状のもので、直径60センチの配管を通して格納容器の
中まで伸ばすため、後ろからさらに別のパイプで押し込む仕組みになっています。
中まで伸ばすため、後ろからさらに別のパイプで押し込む仕組みになっています。
押し込み用のパイプは5本の短いパイプをつないで使う構造で、22日は、装置を
格納容器内につながる配管の手前まで進めたうえで、押し込み用のパイプを
取り付けようとしたところ、パイプの並び順が誤っていることに作業員が気づき、
作業を中断したということです。
格納容器内につながる配管の手前まで進めたうえで、押し込み用のパイプを
取り付けようとしたところ、パイプの並び順が誤っていることに作業員が気づき、
作業を中断したということです。
5本のパイプは、装置と直接つながる1本目だけ構造が異なっていますが、現場では
本来1本目につなぐべきパイプが4本目につながれていたということです。
本来1本目につなぐべきパイプが4本目につながれていたということです。
これらのパイプの中には取り出し装置先端のデブリをつかむ器具からのびた
遠隔操作などに使うケーブルが通っていて、現場ですぐに順番を変えて作業を
継続することはできませんでした。
遠隔操作などに使うケーブルが通っていて、現場ですぐに順番を変えて作業を
継続することはできませんでした。
パイプを並べてケーブルを通す作業は下請け企業の作業員が先月28日に行っていた
ということです。
ということです。
東京電力 小早川智明社長「しっかり安全に進めることが必要」
東京電力福島第一原子力発電所2号機で核燃料デブリの試験的な取り出しの準備
東京電力福島第一原子力発電所2号機で核燃料デブリの試験的な取り出しの準備
作業が中断されたことについて、東京電力の小早川智明社長は「しっかりと安全
最優先に作業するよう指示していたので、無理に進めるよりは、何か心配事が
あったので立ち止まったと受け止めている。これから私も福島に向かうので、原因を
調査したうえで対策を行いたい。核燃料デブリの試験的な取り出しは廃炉の中でも
一番重要な局面で、しっかり安全に進めることが必要だし地元の願いでもある
と思う」と述べました。
最優先に作業するよう指示していたので、無理に進めるよりは、何か心配事が
あったので立ち止まったと受け止めている。これから私も福島に向かうので、原因を
調査したうえで対策を行いたい。核燃料デブリの試験的な取り出しは廃炉の中でも
一番重要な局面で、しっかり安全に進めることが必要だし地元の願いでもある
と思う」と述べました。
いわき市で開かれた会議で、東京電力の新妻常正フェローは着手を予定していた
核燃料デブリの試験的な取り出しが装置の取り付けミスで延期されたことを報告し、
「今後、詳細を確認して説明させていただきたい」と述べました。
核燃料デブリの試験的な取り出しが装置の取り付けミスで延期されたことを報告し、
「今後、詳細を確認して説明させていただきたい」と述べました。
福島県漁連 野崎哲会長「廃炉の大きな節目 頑張ってもらいたい」
これを受けて、福島県漁連の野崎哲会長は「詳しい原因がわからないのでコメント
する立場にないが、東京電力も慎重に作業を行っているんだと思う。デブリの
取り出しは廃炉の大きな節目になるので頑張ってもらいたい」と話していました。
する立場にないが、東京電力も慎重に作業を行っているんだと思う。デブリの
取り出しは廃炉の大きな節目になるので頑張ってもらいたい」と話していました。
核燃料デブリの試験的な取り出しの着手が、装置の取り付けミスで延期された
ことを受けて、福島県は22日夕方、東京電力に対し申し入れを行いました。
ことを受けて、福島県は22日夕方、東京電力に対し申し入れを行いました。
この中で県危機管理部の伊藤繁政策監は「人為的かつ初歩的なミスで、昨今の
トラブルの発生状況も踏まえると、県民に大きな不安を与えかねない」と指摘し、
懸念を伝えました。
トラブルの発生状況も踏まえると、県民に大きな不安を与えかねない」と指摘し、
懸念を伝えました。
そのうえで東京電力に対し、原因の究明と再発防止対策を確実に講じ、同様の
ミスを起こさないよう着実に作業を進めること、作業の進ちょく状況などの
わかりやすい情報発信に取り組むよう求めました。
ミスを起こさないよう着実に作業を進めること、作業の進ちょく状況などの
わかりやすい情報発信に取り組むよう求めました。
東京電力の高松樹執行役員は「お騒がせし、ご心配をおかけして申し訳ありません。
再発防止対策と原因究明、情報発信をしっかり実施していきます」と応えて
いました。
再発防止対策と原因究明、情報発信をしっかり実施していきます」と応えて
いました。
今回の試験的な取り出しで、東京電力は、2号機の原子炉を覆う格納容器の
底にある核燃料デブリのうち、小石状のものをひとつぶ取り出す計画です。
底にある核燃料デブリのうち、小石状のものをひとつぶ取り出す計画です。
この際、放射線量が高くなりすぎないよう、重さを3グラム以下に抑える
としています。
としています。
取り出しには専用に開発した「テレスコ式」と呼ばれる伸縮式の細いパイプ状の
装置を使います。
装置を使います。
はじめに、格納容器の内部に通じる直径60センチメートルの配管の中に装置を入れ、
21メートルまで徐々に伸ばしていきます。
21メートルまで徐々に伸ばしていきます。
そして、格納容器の内部に達した先端部分からデブリをつかむ器具を数メートル
下までケーブルでつり下ろし、底に堆積しているデブリをつかんで回収する
計画です。
下までケーブルでつり下ろし、底に堆積しているデブリをつかんで回収する
計画です。

現場の放射線量が高く人が容易に近づけないことから、ほとんどの作業は遠隔操作で
行われ、器具の先端についたカメラで状況を確認しながら装置を慎重に進めます。
行われ、器具の先端についたカメラで状況を確認しながら装置を慎重に進めます。
さらに、作業員の負担や被ばく線量を考慮し、1日の作業時間は午前中の数時間に
抑える予定で、こうした事情から、東京電力は作業を完了するまでには1週間から
2週間程度かかるとしています。
抑える予定で、こうした事情から、東京電力は作業を完了するまでには1週間から
2週間程度かかるとしています。
装置でつかんで持ち上げ、格納容器の外へ回収したデブリは容器に入れる前に
表面から20センチメートルの距離で放射線量を測定し、1時間当たり24ミリ
シーベルトを超えた場合には、作業員の被ばく線量を抑えるため格納容器の内部に
戻す計画です。 放射線量に問題がなければ、デブリを容器に入れ、一連の取り出し
作業は完了となります。

表面から20センチメートルの距離で放射線量を測定し、1時間当たり24ミリ
シーベルトを超えた場合には、作業員の被ばく線量を抑えるため格納容器の内部に
戻す計画です。 放射線量に問題がなければ、デブリを容器に入れ、一連の取り出し
作業は完了となります。

このあとデブリを入れた容器は、茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の
研究施設に運ばれ、半年程度かけて詳しい分析を進める予定です。
今回、核燃料デブリの取り出しを試みる2号機の格納容器は、5年前に同じような
形状の装置を使って調査していて、このとき小石状のデブリとみられる堆積物を
動かせることを確認しています。
形状の装置を使って調査していて、このとき小石状のデブリとみられる堆積物を
動かせることを確認しています。
こうした調査の結果から、政府と東京電力は小石状のデブリは取り出すことが
できると判断し、2号機で試験的な取り出しを行うことを決めました。
できると判断し、2号機で試験的な取り出しを行うことを決めました。
政府と東京電力は、事故が起きた2011年に福島第一原発の廃炉を「30年から40年で
完了する」とした工程表を策定し、これまでの合わせて4回の改訂でも最終的な
目標は堅持するとしています。
完了する」とした工程表を策定し、これまでの合わせて4回の改訂でも最終的な
目標は堅持するとしています。
ただ、今回初めて行う核燃料デブリの取り出しは「2021年までの開始」からすでに
3年近く遅れ、はじめは数グラム程の試験的な取り出しにとどまる計画です。
3年近く遅れ、はじめは数グラム程の試験的な取り出しにとどまる計画です。
今後、3号機で始める予定の本格的な取り出しについても、東京電力が、ことし
3月に国の専門機関からの提言を受けて工法を検討している段階で、開始時期の
見通しは立っていません。
3月に国の専門機関からの提言を受けて工法を検討している段階で、開始時期の
見通しは立っていません。
さらに核燃料デブリを取り出せたとしても、デブリを含む膨大な放射性廃棄物を
どこでどう処分するかについては、取り出し開始後に検討するとしていて、
工程表どおりに最長40年で廃炉を終えられるかは不透明さを増しています。
どこでどう処分するかについては、取り出し開始後に検討するとしていて、
工程表どおりに最長40年で廃炉を終えられるかは不透明さを増しています。
核燃料デブリは、福島第一原発の1号機から3号機で、2011年3月の事故により溶け
落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合ったもので、3基合わせておよそ880トンに
上ると推計されています。
3基すべてで原子炉の底を突き破り、原子炉を覆う格納容器の底まで達していて
▽燃料の主な成分であるウランと
▽燃料のケースや核分裂を抑える制御棒など使われていた金属
それに
▽ケーブル類などさまざまな物質が混ざり合っているとみられます。
これまでの調査で、3基の格納容器内では、塊状や小石状、砂状などの状態で
固まっている核燃料デブリと見られる堆積物が確認されていて、このうち2号機では
5年前に、今回の取り出し装置と似た装置で直接つかんだり、動かしたりする調査が
行われました。
固まっている核燃料デブリと見られる堆積物が確認されていて、このうち2号機では
5年前に、今回の取り出し装置と似た装置で直接つかんだり、動かしたりする調査が
行われました。
ただ、これまでのところ実物を分析できていないことから、混ざり合った物質の
割合、形、硬さなど詳しい性質や状態はわかっていません。
割合、形、硬さなど詳しい性質や状態はわかっていません。
核燃料デブリは、事故直後は極めて高い熱を発していたため、水に浸したり
かけ流したりして冷却を続けてきましたが、東京電力によりますと、熱は大きく
下がっていて、格納容器内の温度は20度から35度程度で「安定した状態を維持
している」ということです。
かけ流したりして冷却を続けてきましたが、東京電力によりますと、熱は大きく
下がっていて、格納容器内の温度は20度から35度程度で「安定した状態を維持
している」ということです。
一方、依然として極めて強い放射線を出し続けていて、2019年の調査では、
2号機の格納容器の底付近で1時間当たり最大7.6シーベルトという放射線量を
計測しています。
2号機の格納容器の底付近で1時間当たり最大7.6シーベルトという放射線量を
計測しています。
これは、人が1時間ほどとどまれば死に至るレベルの被ばくをするとされる値です。
福島第一原発の核燃料デブリの取り出しは、世界でも前例のない困難な取り組み
とされます。
とされます。
海外の原発での核燃料デブリ取り出しは
旧ソビエト時代の1986年に事故が起きたウクライナのチョルノービリ原発では、
およそ170トンの核燃料が溶けてコンクリートなどと混ざり合い、核燃料デブリと
なって原子炉建屋内に残っているみられますが「石棺」と呼ばれるコンクリートの
構造物で覆うなどして取り出しは行われていません。
およそ170トンの核燃料が溶けてコンクリートなどと混ざり合い、核燃料デブリと
なって原子炉建屋内に残っているみられますが「石棺」と呼ばれるコンクリートの
構造物で覆うなどして取り出しは行われていません。
また、アメリカのペンシルベニア州で1979年に事故が起きたスリーマイル島
原発では、福島第一原発とは異なり核燃料デブリが原子炉の中にとどまって
いたため、原子炉を水で満たして放射線を遮って作業することで、事故から10年
余りでほとんどのデブリを取り出しています。
原発では、福島第一原発とは異なり核燃料デブリが原子炉の中にとどまって
いたため、原子炉を水で満たして放射線を遮って作業することで、事故から10年
余りでほとんどのデブリを取り出しています。
いっぽうの福島第一原発では、核燃料デブリが原子炉の外まで広がっているほか、
デブリの総量はチェルノブイリ原発やスリーマイル島原発の5倍から7倍近くに
上るとみられ、取り出しの難しさが指摘されています。
>>トップページに戻る
クリックをお願いします☆

にほんブログ村