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ヨーロッパでは、通訳業界団体の結成が進み、日本では、進まなかったのには、
以下の3つの要因が考えられる。

① 日本における通訳に対する関心の低さ
② 日本人通訳者の個人主義思考
③ 翻訳エージェンシーの業界団体代替



【日本における通訳に対する関心の低さ】
ヨーロッパでは、通訳職は、公共財であるとの認識が存在し、国立大学や
有名私立大学が通訳者の養成を行っている。 日本では、大学で養成コースが
設置される事が増えて来ているが、依然として、そこを卒業したからといって、
通訳者として機能するまでのトレーニングは出来ていない。 これには、
歴史的要因が考えられる。 日本では、通訳専門職の歴史がヨーロッパと
比較して浅い。 その裏には、日本が、長い間海外に対して、閉ざして来た
鎖国国家、閉鎖社会であった事が考えられる。 ヨーロッパでは、同じ陸続きの
大陸に複数の国と言語が存在しているという、地理的な背景から、国境を
接している国々や、同じ環境上の関心を持つ国々間等で、コミュニケーションを
円滑にはかる必要性があった。 ヨーロッパでは、各国間の対話が、日本より
頻繁に、幅広く行われていたのである。 その結果、通訳者の必然性が早く
から認められていたと思われる。

他方、日本は、地理的にも島国であり、国境を陸続きで接する国もなく、世界の
他の国々との交渉の必要性は、ヨーロッパほどは危急ではなく、件数も多くは
なかった。 通訳者の必要性は、それほど多くは発生せず、その場その場で
英語の出来る人材が対応をし、凌いで来たと言える。 通訳に対する社会的
ニーズが、それほど盛り上がらなかったため、通訳者集団の登場には時間が
掛かった。 よって、日本では、職業団体が設立される程の歴史的積み重ねが
未だに十分ではないと言える。

【日本人通訳者の個人主義思考】

日本では、独学で通訳者になる人が多い。 既存の敷かれたレールがないため、
自分の力で道を切り開いている人が多い。 ある大学を卒業すれば、自動的に
通訳者になれる訳ではなく、ある試験に合格をすれば、自動的になれるもの
でもない。 また、頑張って勉強さえすれば、誰でもなれるものでもない。
日本という、フリーランスで働く仕組みが確立されていない社会の中で、
独立請負業者として、個人事業主として、自分で全責任を負いながら通訳業を
行っている人は、個人主義の強い人とも言える。

通訳者の人的資本市場では、各個人が単独で働いている。 よって、通訳者は、
『一匹狼』が多い。積極的に、また、主体的に、グループを作って集団として
何かを変えて行こう、起こして行こうとするよりも、エージェンシーの規定を
受身的に自らの行動規範として受け入れ、自分の身の回りの狭い範囲を整備する
事で良しとしてきた傾向が見られる。

【翻訳エージェンシーの業界団体代替】

日本では、翻訳エージェンシーが、業界団体の役割を果たして来たために、
それとは別に業界団体が築かれ辛かったという点が挙げられる。 日本では、
エージェンシーが専門家集団の看板として存在していたため、エージェンシーに
属する事は、「資格」を有する事と同一視されていた。

日本では、通訳という職業が確立する前から、その供給母体であるエージェンシー
組織が確立され、業界を先導して来た歴史がある。 日本では、エージェンシーが
生まれてから、通訳職が確立されたという順番である。 ヨーロッパでは、
通訳職が確立されてから、業界団体が生まれたという順番であった。 この
歴史上の差が、業界団体の有無の要因であると考えられる。

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