【古英語とバイキングの侵入】
 現代英語の元となった古英語は、実は、アングル族が持ち込んで来た言語
であり、アングロサクソン人が1100年頃まで使っていた言葉である。 つまり、
系統的には、インド・ヨーロッパ語族の中の西ゲルマン語群に属する言葉と
なっている。 現代英語の基礎的な単語は、その殆んどが、アングロサクソンの
言葉であると考えて差し支えない。

やがて、紀元前597年には聖オーガスティンがケント州からキリスト教の布教を
開始、イギリスがキリスト教化するに伴って、キリスト教に関連した多くの
ラテン語、ギリシャ語、ヘブライ語起源の語彙が英語の中に入って来た。

8世紀に入ると、バイキングと呼ばれる人々がスカンジナビアからイギリスへと
侵入して来る。 彼らもまた、ゲルマン民族の一派であったが、彼らの言葉は
同じゲルマン語でも北ゲルマン語群に属していた。 彼らは先住のアングロ
サクソン人と激しい戦いを繰り広げた後、ローマ人の築いたウォトリング街道の
北東部に定住することとなった。 その結果、その地域は、デーンロー地域と
呼ばれ、現在もスカンジナビア起源の地名が残っている。 現代英語の中にも
900語ほどスカンジナビア起源の語彙が残っている。

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【フランス語の侵入】

バイキングは、フランスのノルマンディーに国を建て、彼らは、やがて文化的には
フランスに融合し、言葉もフランス語を用いるようになって行った。 1066年
には、ノルマンディー公ウィリアムが、イギリスに侵入し、ヘイスティングスの
戦いにおいて、ハロルド王を打ち破ってイギリスの王位に就いた。 いわゆる、
ノルマン征服王朝の成立である。 この時、ウィリアムは、国政と宗教の主な
ポストには、全てフランスから連れて来た家臣をあてたので、以後数世紀に
渡って、イギリスの重要なポストには、フランス語を母国語とする人々で占め
られることとなった。

国王も例外ではなく、ハロルド王以後は、ほぼ300年の間、英語を用いる王は
居なかった。 そして、この間に、英語は実に多くのフランス語の語彙が入った。
それは、ちょうど今日の日本語に、本来、日本語にあった大和言葉と漢語と
呼ばれる中国語が混在している状況と良く似ている。 日本語の中に漢語に
あたるものが英語ではフランス語やラテン語となっている。

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【英語の復活から世界支配へ】

しかし、ウィリアムと共にイギリスへ渡って来た支配階層も、時が経つに連れて、
土地の女性と結婚し、生まれて来る子供の世話をする乳母にも土地の女性を雇う
などしているうちに、次第にフランス語を失って行った。 やがて、13世紀に
入ると、中世英語で書かれた詩なども出て来るようになり、1337年にフランスとの
間に百年戦争が起こると、英語に対する意識が急激に高まり、1362年には、議会の
開会宣言が初めて英語で行われた。

やがて、15~16世紀になると、現在の英語に近い近代英語が成立し、
シェイクスピアを初めとする英文学史上でも良く知られた人々の活躍が始まる。
ちょうどこの頃、ヨーロッパでは大航海時代が始まり、コロンブスがアメリカ
大陸へ到達し、やがて英語を話す人々は、北アメリカ大陸へも移住を始めた。
こうした歴史を反映して、アメリカの英語の中には、実は、シェイクスピアの
時代のイギリス英語に近いものが残っていることがある。

もちろん、近代的なテクノロジーや音楽、映画などの娯楽産業、それに政治、
経済の先進国であるアメリカで生まれた言葉がイギリスに逆輸入されることも
多いが、現代アメリカ英語の発音や、日常会話の語彙の中には、イギリスの
この時代の発音や語彙が残っていることがあり、人々は、それとは知らずに
使っていることが良くある。

近代に入ってイギリスが広大な植民地を建設した結果、英語はアメリカ大陸のみ
ならず、アジアやアフリカからオセアニアまで世界中の広い地域で使われるように
なった。 そして、現在では、互いに英語を母語としない人々の間でも国際的な
共通語の言語として使われている。

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