プロレス界に復帰を果たした長与千種のドキュメンタリー番組ザ・ノンフィクション
『敵はリングの外にいた(10/26放送)』』を見た。 人気絶頂であったクラッシュ・ギャルズ
結成前から現在までの長与の人生を赤裸々に追う番組だったのだが、非常に心に残った。

頂点を極めた女子レスラーたちのその後の人生は、哀れとも言うべき状況で、極悪同盟と
して知られていた、ダンプ松本は、54歳になった今でもプロレスを続けていた。 人気絶頂の
頃は、有り余る程のギャラも貰えたそうだが、閑古鳥が鳴いている現状の女子プロ界では、
それだけでは食べて行けない。

独身で一人暮らしの彼女は、整骨院に通い、50代の体のキツさを晒し『こう見えて薬飲んで
寝てるんだから』とまで告白する。 居酒屋でお気に入りのイケメン店員には酔った勢いで
抱きつくのが精いっぱい。 試合のない時はパーティのサプライズゲストとして登場し、
ギャラ以外のお捻りに感謝する。 今の夢はプロレスラーたちが集う老人ホームを作ること。
互いに持つ悩みが分かるからこそ『その為にお金を貯めている』と涙を流しながら言えるの
だろう。 ダンプ松本が今、置かれている状況の切実さが伝わる映像だった。
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一方、長与千種も自分と戦っていた。 カラオケバーを営む彼女は9年前にプロレス界からは
引退し、プロレスとは一切関わりを持たなかった。 当時のことを『あまりにも頂点が強烈
だったので早く下りたい、でも下りられない』と語るが、一人愛犬とカップラーメンを食べ、
『体に悪い』と分かっていながらもコタツで寝てしまうような生活はいかがなものか。 彼女が
レスラーになったきっかけは、両親に捨てられ、一人で生活をしたいと考えたためだった。
それからもお金をせびる親に対しては『お金を出すことが嫌なんじゃない、ただ存在として、
長与千種として求められたい』と言葉を詰まらせる。

ある日、ダンプ松本から長与千種に『プロレス界がこのままだとダメになる』と電話があった。
復帰を決意した長与は体重を25キロも落とし、試合に挑む。 ダンプは相棒でもあった
クレーン・ユウこと本状ゆかりにも声を掛けた。 シングルマザーとして3人の子どもを育て、
生活保護を受けるまで追いつめられていた彼女はプロレスをやることは断ったが、ダンプの
セコンドとして登場することになった。 大きな歓声の中、試合が始まった。 三人の30年前の
映像と、現在の映像がカットバックする。 もし当時を頂点とするのなら、今のこの時は
何なのだろう。 二度目の頂点とは言わない。 だが、それぞれにとって30年前とは想像も
しないような幸福な時間であることは間違いなかったはずだ。 リングの上で最高の表情を
見せている長与千種がそれを証明している。

試合の後、長与は入院中の母親の元へと向かった。 父の墓を東京に移し、一緒に生活を
しないかと提案する為だ。 恨みを持っていた彼女にとって、それは大きな決断だったに
違いない。 ダンプ松本との試合が何かを変えたのだろう。 娘の想いに対し、母親は
『千種はお父さんと私の宝物』と必死で声を絞り出した。 番組の最後、長与千種はダンプと
共にリングの上にいた。 もうすぐ50歳になる彼女は、実に楽しそうだった。
 
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