1945年8、9月に行われた旧ソ連軍による北方四島占領作戦に、米国が艦船10隻を
貸与していたことを、根室振興局が米国とロシアの専門家による研究成果などを
突き合わせ、明らかにした。 米国はソ連の対日参戦に備え、大量の艦船の提供
だけでなく、ソ連兵の訓練も行っており、米国の強力な軍事援助が四島占領の
背景にあったことが浮かび上がった。

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振興局の調査結果によると、樺太南部の返還と千島列島の引き渡しと引き換えに、
ソ連の対日参戦が決まった1945年2月のヤルタ会談の直後、ともに連合国だった
米ソは「プロジェクト・フラ」と呼ばれる合同の極秘作戦をスタートさせた。

米国は1945年5~9月に掃海艇55隻、上陸用舟艇30隻、護衛艦28隻など計145隻の
艦船をソ連に無償貸与。 4~8月にはソ連兵約1万2千人を米アラスカ州
コールドベイの基地に集め、艦船やレーダーの習熟訓練を行った。
コールドベイには常時1,500人の米軍スタッフが詰め、ソ連兵の指導に当たった
という。

訓練を受けたソ連兵と貸与艦船は樺太南部や千島列島の作戦に投入された。 8月
28日からの択捉、国後、色丹、歯舞の四島占領作戦には、米の貸与艦船10隻を含む
17隻が参加。 ソ連軍は各島で日本兵の武装解除を行い、四島の占領は9月5日
までに完了した。

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こうした歴史的史実が判明したのは、根室振興局が2015年度から取り組む
北方領土遺産発掘・継承事業が切っ掛け。 各国の資料を集める中で、ソ連が
樺太南部と千島列島での作戦に投入した全艦船を調べ上げたイーゴリ・サマリン氏
(現ロシア・サハリン州戦勝記念館科学部長)の論文「1945年8月のサハリンと
クリル諸島上陸作戦に参加した軍艦と補助船舶の注釈付きリスト」(2011年3月)を
入手した。

リストに米艦船が含まれていることが分かり、経緯を探るうち、米ソの極秘
プロジェクトの内実を書いた元米軍人リチャード・ラッセル氏の著書
「プロジェクト・フラ」(2003年)の存在を知り、米国から取り寄せた。
国後島の地元紙「国境にて」の過去記事など各種資料と照らし合わせ、四島占領
作戦での米艦船の使用を突き止めた。

調査を取りまとめた国後島元島民2世の谷内紀夫・根室振興局副局長は
「米国が徹底した対ソ支援を行っていたことが分かり、北方領土問題への両大国の
関与が浮き彫りになった」と話す。

調査資料は来年1月19日~2月2日に根室市内の道立北方四島交流センターで開く
企画展で公開。 初日の1月19日に谷内副局長が講演する。

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■ソ連の独断ではなかった 北方領土問題の経緯に詳しい和田春樹東大名誉教授の話
北方四島占領を含む旧ソ連軍の対日作戦を米国が軍事援助していたことは、
日本国内ではほとんど知られておらず、発見と言える。 四島占領はソ連が勝手に
行ったのではなく、米ソをリーダーとする連合国の作戦として行われたという
ことを示している。

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