日本でも安倍政権になってからは、『ウィメノミクス』と呼ばれる女性の就業
支援や幹部登用など、女性の社会進出を積極的に支援する動きが始まっているが、
これほど女性の社会進出が叫ばれている風潮の中でも、日本社会の中で活躍する
女性の割合は未だ極めて低い状態のままとなっている。

『ウィメノミクス』は、少子高齢化により不足する労働力を、出産して子育ての
ために家庭に入った母親たちを社会復帰させて補おうという経済戦略の一環なの
だが、働く女性に立ちふさがる社会的な壁とは一体何なのか? 出産大国、恋愛
大国としても知られるフランスと日本の現状を比較して紹介してみたいと思う。

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【子供を持つ女性が働きにくい原因】
・保育園などの子供を預けられる施設や制度が足りない
・核家庭が増え、祖父母から保育のサポートを受けられない
・公的な休暇が少なく、仕事の休みが取りにくい
・経済的に子供を育てる余裕がない
・子供ができたら家庭に入るものという社会風潮がある
など

フランスの母親が女性らしく子育てを楽しめる5つのポイント

①就業時間が守られている

フランスでは、男性も女性も就業時間が徹底して守られており、男女共に決まった
時間内に仕事を切り上げるため、子育て中のママたちが引け目を感じながら
こっそりと定時で帰宅するという社会的な後ろめたさがない。

フランスの職場は男女平等であり、日本のように残業することが当たり前、
あるいは、終業後に部内の人間と飲み屋を終電まで飲み歩くといった風潮が
ないため、終業後の時間がハッキリと読めるのが日本との決定的な違いとなって
いるため、ストレスが少ない。 

フランスの男性は、比較的育児には協力的だと言われているのだが、男性も女性も
仕事の時間をきっちりと守ることで、お互いに育児をする余裕があるのかも
知れない。

【就業時間が一定している場合の子育てメリット】
・子供の都合で予定が立てやすい
・食事や入浴などの生活日課を決まった時間でこなすことができる
・仕事と家庭の気持ちの切り替えがすばやくでき、ストレスが減る
・気持ちに余裕が生まれ、家族との時間を楽しむことができる
など

世界の有給休暇支給日数とその消化率
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②休暇制度が整っている

フランスの育児休業は、出産から3年間となっており、日本で法律的に保障を受ける
ことができる育児休業は、出産から1年間のみ。 子供が一番手の掛かる時期に
十分な育児休暇が取得出来るフランスの社会制度は、女性に対しても非常に
手厚いと言える。

日本では、マタハラや、出産した女性を降格処分にする企業が相次ぎ、社会問題
にもなっているが、フランスでは、育児休業後でも産前と同等の地位が法律で
保障されている。 尚、この育児休業は、いつ切り上げても良いことになっている
ため、フランスのママ達は自分の体や子供の成長の度合いを見極めて、自分の
好きなタイミングで職場復帰することが出来る。
 
フランスの学校には、『バカンス・スコレール』と呼ばれる丸2ヶ月間の長い
休暇があり、親も子供の休みに合わせて、5週間もの有給休暇を取るのが普通。
フランス人にとって『有休取得は国民の権利ではなく義務』となっており、
1年間に5週間与えられた有給休暇の消費率は、男女共に、ほぼ100%と言われて
いる。 働く時は全力で働き、休暇を思いっきり楽しむため、気持ちの切り
替えが付けやすい。

【フランスの子育てで取得出来る休暇】 
・育児休業・・子供が3歳に達するまで。
無給だが要件を満たせば乳幼児保育手当の支給があり、勤務時間短縮度に応じて
就業自由選択補足手当が支給される。

・看護休暇・・16歳未満の子供がいる場合は年3日。
1 歳未満の子供、あるいは 16 歳未満の子供が 3 人以上いる場合には最長 5 日間
取得可能。

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③働き方を自分で選ぶことができる

フランスの出産休業期間は、出産から3ヵ月間となっているが、この3ヵ月間で
職場復帰する人も居れば、3年間の育児休業を取って育児に専念する人も居る。
フランスでは、そんな多様なライフスタイルが、当たり前のこととして認められる
国となっている。

日本で子育てを優先したい場合は、退職以外の道は残されてはおらず、ましてや、
男性のイクメン休暇は、現実的にはあり得ないでしょう。 近年、日本でも
『新しい働き方』が導入され、1日6時間程度の短い労働時間や週2~3日程度の
勤務体型が導入されつつあるが、日本の場合は、男女ともに、それ以外に仕事が
見つからないため、仕方なくそこで働くしかないのが実情だが、フランスの女性は、
子供の育児の様子に合わせて働く時間を選び取り、無理をせずに育児と仕事を
両立できる工夫がされている。

フランスのパートタイム労働者と日本のパートとの根本的な違い 

フランスでも、『子育てを優先したい』と考える人達が出産後に選ぶのは、やはり
パートタイム労働。 但し、フランスのパートタイムは、日本のとは大幅に違なり、
正規雇用の職員として、出産後3年間の身分が保証されている。

日本では、パートタイム労働者に対するあからさまな賃金の差や、その扱いが
取り沙汰されているが、フランスでは、復職後は以前の地位が法律で保障されて
いるため、安心してこの制度の恩恵を受けることができる。 働いた時間に対して
給料が支払われ、更に国からは助成金をもらうこともできるため、子育て中は、
経済的にも保障されている。

更に、3年間の育児休業が終了してからも、子供達の学校休暇に合わせた働き方が
できるようにパートタイム労働を採用している企業が多いのがフランスの特徴と
なっており、日本のように、子供の休みに合わせた休暇が全く取れないなどという
理不尽な扱いは受けない。

【フランスで保障される公的助成金の対象】
・フルタイムで働いていて育児休業を取得する場合
・通常勤務の50%の時間のみ働くパートタイムを選択した場合
・通常勤務の50%から80%のみ働くパートタイムを選択した場合

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④保育・教育システムが整っている

フランスでは、6歳未満の子供を育てている母親の就業率は6割を超えており、
日本では3割程度に留まっている。

フランスでは、0歳児から受け入れている保育園が多く、政府から認可を受けた
家庭保育事業サービス等が充実していているため、日本よりも子供の預け先の
選択の幅が広いため、職場復帰がしやすい。 フランスでは、3歳から学校に入り、
学童保育も充実している。

フランスでは、3か月の出産休暇が終わると、すぐに仕事に復帰して行く母親が
多く、子供が生まれ、体が回復したらすぐにでも仕事に戻り、キャリアが積める
というのも、働く女性にとっては嬉しい環境となっている。

【フランスの子供の預け先】
・保育園・・・0歳から3歳までの子供に対応。 ただし、競争率は激しい
・小規模保育園・・0才から6才までの子供に対応。
・保育ママ・・0歳から6歳までの子供に対応。 特別な資格を有する
・家政婦さんや子供世話係・・自宅で全年齢の子供に対応。 学生などが多い
・学校・・午前8時半から午後4時半まで授業。
・学童・・午前7時半から午後7時まで。 学校の長期休暇中も利用可能
など

フランスの補助金制度の割合

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⑤補助金制度が整っている 

現在、先進国の中は、出生率が深刻な問題となっているが、その中でも、フランスと
スウェーデンは、高い出生率を維持している。 この2つの国でも一時出生率が低下
したが、その後、出生率を向上させるために、政府はあらゆる努力をして来た。

女性が働きながら子育てができる社会の構築、並びに、子供を持つことに対する
経済的負担の軽減措置は、この2カ国に共通しており、特に、フランスは、経済的な
負担を可能な限り少なくして、子供を育てやすい環境を整えて来た。

フランスの教育費用は安い

日本では教育に余りにもお金が掛かり、親の経済的な状況や、貧困等によって進学を
諦める子供が増えている。 経済的な余裕がないために、子供を持つことを断念
したり、最近では、結婚すら諦めているケースも少なくない。

しかし、フランスではこういった悪循環をなくすために、さまざまな公的補助金
制度が用意されており、子供を預けてでも働くメリットを実感している母親が
たくさん存在している。

フランスでは、基本的に公立校であれば、授業料は高校まで無料となっており、
大学も入学金等はなく、年間数万円程度の学費で十分な教育を受けることができる。

【フランスでの子育てを支える補助金制度】

・一般的扶養手当
所得制限はなく、20歳未満の子供が2人以上いる家庭に子供の人数に合わせて支給
される家族手当や、成人手当、低所得家庭を救済する低所得家庭手当、シングル
マザーにも支給される孤児手当

・.幼児養育手当
育児のために休業やパートタイム労働を選択した場合の育児休暇補償や、出産
一時金、基礎手当、保育料手当

・.特定目的手当
障害児手当、学童手当、看護手当、住居手当、引越し手当
など

総じて、日本の女性の社会進出が全くと言って良いほど進んでいないのは、社会や
企業に出産、子育てという概念が浸透していないのと、それらに対する社会保障や
受け入れ先が全くと言っても良いぐらいに整備されていないことを挙げることが
できるが、貧富の差がますます激しくなっている日本社会においては、政府が
積極的に介入をしない限り、この先も特に何も変わらないであろう。

イクメン休暇を取得しようとした議員が辞職に追い込まれたが、女性の育児休暇
以前に、男性の育児休暇は、ドイツ、フランス、スウェーデン等では保障されて
おり、女性だけではなく、男性の育児休暇、並びに、結婚すら諦めてしまうような
不安定極まりない雇用情勢を日本政府には是非とも改善して欲しいところ。

【お勧めの一冊】


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