2018年12月5日、ブラック企業大賞実行委員会は、2018年のブラック企業
大賞のノミネート企業9社を発表した。
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株式会社ジャパンビジネスラボは、都内で語学学校等を運営する企業である。
同社で英語講師を務めていた正社員の女性は、2014年、育休明けに保育園が
見つからず規定上の休職を申し出たが拒否された。 同社には「希望する場合は
正社員への契約変更が前提」と記載された育休明け社員向け契約社員転換制度が
あり、このままでは自己都合退職になると言われた女性は、「正社員に戻れるなら」
と、週3回、1年雇用の契約社員として職場復帰した。  復帰後、保育園が
見つかり、正社員に戻りたいと求めたが、会社は拒否し、1年後の2015年、
「期間満了」を理由に社員を雇い止めした。 尚、社員は面談の中で上司から
「俺は彼女が妊娠したら、俺の稼ぎだけで食わせるくらいのつもりで妊娠
させている」と発言されるなどした。 社員は会社を相手取って地位確認を
求める訴訟を起こし、2018年9月、東京地裁は、会社が行った雇止めについては
無効、会社の対応は不法行為とする判決を下した。 ただし、正社員の地位の
確認を求めた点については退けた。

判決文では「原告の受けた不利益の程度は著しく、被告(会社側)の不誠実な
対応はいずれも原告が幼年の子を養育していることを原因とするもの」と認定
している。 また、「俺の稼ぎだけで食わせる」発言については、
「暗に妊娠した者とその配偶者に落ち度がある批判しているものと捉えられ
かねない不用意かつ不適切な言動であり、交渉に臨む態度として許容されない」
と厳しい指摘をした。

現在、会社側も社員側も共に控訴して係争中である。 女性の労働市場への
参加が進む中、出産した女性社員を短期契約の契約社員などに転換させ、
契約期限をもって雇止めにする新手の出産解雇は、ここ数年目立っている。
その典型的な例の一つとしてノミネートした。

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株式会社ジャパンビバレッジ東京は、サントリー食品インターナショナル
グループ傘下の自動販売機オペレーション大手・ジャパンビバレッジホール
ディングスの子会社である。 同社は、2017 年末に足立労働基準監督署により
「事業場外みなし労働時間制度」の違法適用を指導され、違法な長時間残業が
あったとして是正勧告を受けた。この労働者の残業時間は月100 時間を超えて
いたという。

しかし、同社はこの制度を違法適用したことで、1日10 時間を超える自動
販売機の補充などの労働に対して、7時間45分の給与しか支払っていなかった。
また、ある支店の支店長がクイズを出し、正解者にのみ有給休暇の取得を認める
「有給チャンス」とよばれるパワハラの存在も明らかとなり、メディを賑わせた。
言うまでもないが、有給休暇の取得は労働者の権利であるので、「クイズに正解
すること」をその取得条件とすることは法律違反である。 この「有給チャンス」
問題に関連して、同社の複数の管理職が処分されたという。

自動販売機でいつでも飲み物が買えるのは、その自動販売機に飲料を補充する
労働者があってのことであるが、その利便性の裏には、無理のある労働条件や
有給休暇すらまともに取らせないパワーハラスメントなどの横行があったことは、
世に広く知られるべきことであるのでノミネートした。


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株式会社日立製作所は、日立グループの中核的企業であり、日本を代表する
電機メーカーである。 会長の中西宏明氏は、日本経団連会長を務めている。
また、日立プラントサービスは日立製作所のグループ会社である。 2013 年に
同社に新卒入社した20 代の労働者が、日立プラントサービスに在籍出向中、
精神疾患によって労災認定された。 この労働者は富山県の工事現場で設計・
施工管理監督をしていたが、月100 時間を超える長時間残業が頻発し、最大で
月160 時間を超えていた。

更に、所長から「いらない」「着工まで不要」「めざわりだから帰れ」
「仕事辞めてしまえ」などの暴言を受け続け、労働時間を勤怠記録に記入する
際には「考えてからつけるように」と言われ、労働時間の過少申告に追い詰め
られた。 更には、座っていた椅子を蹴られており、これらの長時間労働や
パワハラによって精神疾患を発症した。

加えて、同社では山口県の笠戸事業所において、数百名のフィリピン人技能
実習生を不正に働かせていたとして、法務省が技能実習適正化法違反の疑いで
同社を調査している。 報道によれば、彼らは配電盤や制御盤を作る
「電気機器組み立て」を習得するはずが、窓や排水パイプ、カーペットや
トイレを鉄道車両に取り付ける作業しかさせられていなかったという。
技能実習生の在留資格の更新が出来ないことを理由に、既に99 名が解雇
されている。 長時間労働とパワハラによって深刻な労災が発生したこと、また、
外国人技能実習生に対する扱いの不適切さからノミネートした。

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株式会社モンテローザは「白木屋」「魚民」「笑笑」「目利きの銀次」
「山内農場」などの居酒屋チェーンを展開する外食企業である。 2017 年6 月、
同社が福岡県福岡市で運営する「わらわら九大学研都市駅店」の店長(当時
53 歳)が開店準備中に倒れ、致死性不整脈で亡くなった。 遺族の労災申請を
受けて福岡中央労働基準監督署が調査したところ、男性が亡くなるまでの
3カ月間の時間外労働が過労死ラインとされる月80 時間におおむね達している
と確認されたことなどから、今年8 月7 日、労災と認定された。

男性のいとこがインターネットで発表した告発漫画によれば、男性は生前、
友人とのLINE で「15 時から深夜3時まで勤務。それから6 時台の始発まで帰れず、
8 時前にやっと帰宅。そのあと12 時には起きないといけない」「地獄です」
などと漏らしていた。

モンテローザでは各店に勤怠管理ソフトを導入しており、亡くなった男性も
記録上は週に2 日休み、休憩も取れていることになっていた。 だが、上記漫画や
一部報道によれば、このソフトは一種の「労基署対策」であり、実際はサービス
残業や休日出勤、休憩なしの労働がまかり通っていたという。 外食産業における
長時間労働の結果の過労死という幾度となく繰り返される悲劇は、決して看過
出来ないためノミネートした。
ゴンチャロフ製菓株式会社は、神戸市に本社を置き、チョコレート・焼き菓子
などの洋菓子の製造販売及び喫茶経営を手がけている。 2016 年6 月、同社の
工場に勤務していた当時20 歳の男性が電車に飛び込んで自殺した。 これが
長時間労働と上司によるパワーハラスメントが原因として、2018 年6 月に西宮
労働基準監督署により労災認定された。

報道によると、チョコレート製造などに携わっていた男性は、廃棄品は牧場に
回されることから、ミスをすると「牛のえさ、作りに来とんか」と責められ、
辞意を申し出ると「お前の出身高校からはもう採用しない」と叱られるなど、
上司からパワハラを受けていたという。

更に、男性は2015 年9 月~12 月には月約80~100 時間の残業をしており、
同労基署は「業務による強い心理的負荷が認められる」とした。 長時間労働と
パワーハラスメントによって20 歳の若い命が奪われるという痛ましい事例であり、
近年社会問題となっている長時間労働とパワーハラスメントを象徴する事例
としてノミネートした。 

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財務省
財務省は、国家予算の編成などを担う省庁の1つであり、行政の中枢に位置付け
られる国の重要機関である。 今年4月、当時、財務省の事務方のトップである
事務次官が、テレビ朝日の女性記者に対して、取材中に性的な言動を繰り返して
いたことが報道された。 同省の最高責任者である麻生太郎財務大臣は当初、
事実関係の確認には双方から意見を聴くべきだなどとし、被害女性に名乗り出る
よう促す一方で、事務次官がはめられた可能性などにも言及した。

その後、財務省は顧問弁護士に調査を委託。 同月27日の記者会見で、事務次官
によるセクシュアルハラスメント(セクハラ)があったと判断したことを発表した。
尚、事務次官側はセクハラについて否定している。

この過程で麻生大臣は、日本には「セクハラ罪という罪はない」と発言し、
セクハラを軽視する態度を崩さなかった。 また、セクハラ行為を防止することが
第一であるはずなのに、「男を番記者にすればいい」などと女性記者を排除する
ような発言もあった。 こうした麻生大臣の言動は、セクハラが深刻な社会問題
であることの認識を欠いていると指摘せざるを得ない。

現在、健全な民間企業はセクハラなどのハラスメントをなくそうと努力している。
にもかかわらず、「女性活躍」を標榜する政府の中枢機関で起きたセクハラ事件に
対して、その対応が余りにお粗末であったと言わざるを得ない。 その悪影響は
計り知れないほど大きい。 そこで、民間企業ではないが特別にノミネートした。

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スルガ銀行は静岡県沼津市に本店を置き、東京ほかの大都市でも営業展開していた
地方銀行である。 同行では、今年5 月に破産手続開始が決定し破綻した不動産
会社「スマートデイズ」の勧誘のもと同社のシェアハウスに投資していた一般
投資家らに不正な融資をしていたことが判明し、今年9 月7 日には、この問題に
関する第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)の調査報告書が公表された。
これにより、同行が行員たちに過大なノルマを押し付ける一方、達成出来ない
人に対しては、凄絶なパワーハラスメントを行っていたことが発覚した。

上記報告書によれば、第三者委ではスルガ銀行の全行員を対象にアンケート調査を
実施。 その結果、「首を捕まれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った」
「数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた」、「ゴミ箱を蹴り上げ
たり、空のカフェ飲料のカップを投げつけられた」「死んでも頑張りますに対し、
それなら死んでみろと叱責された」「物を投げつけられ、パソコンにパンチされ、
お前の家族皆殺しにしてやると言われた」…などの回答が多数寄せられたと
されており、第三者委もこうしたパワハラの蔓延が不正融資の温床になったとの
見方を示している。

パワハラ行為それ自体の酷さもさることながら、この放置・励行が最終的には
社会全体に害を及ぼすことの実例としてノミネートした。
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野村不動産株式会社は、不動産業界の最大手企業である。 野村不動産では、
「裁量労働制」が違法適用されていた2016 年9月、50 代の男性社員が過労自殺
していたことが今年3 月発覚した。

同社では2005 年、会社の中枢で経営企画の立案や情報分析などを行う社員が
対象の「企画業務型裁量労働制」を約600 人の社員に適用した。 だが実際には、
マンションの営業担当など本来は適用の対象とはならない業務の担当者がここに
多数含まれており、亡くなった社員もこれを適用された結果、一ヶ月の残業時間が
180 時間を超えることもある長時間労働を強いられていた。

上記の過労自殺が労災認定された2017 年12 月には、こうした裁量労働制の違法
適用とそれに伴う違法残業、残業代未払いなどにより同社の東京本社など5 つの
事業所が労働基準監督署から是正勧告を受けたほか、宮島誠一社長が東京労働局
から是正の特別指導を受けている。

裁量労働制が違法な長時間労働の温床となっている事実を示し、その悪用が最悪の
労災事故を引き起こした事例としてノミネートした。

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三菱電機株式会社は、家電から発電機まで様々な電気製品を製造するメーカー
企業であり、我が国の代表的な大企業である。 同社では男性社員5人が長時間
労働が原因で精神障害や脳疾患を発症して2014~2017年に相次いで労災認定
されていたことが発覚した。 5人はシステム開発の技術者か研究職で、そのうち
2人は過労自死しており、3人には裁量労働制が適用されていた。 裁量労働制が
適用された3名の中には過労自死した社員も含まれていたという。

同社・ネットワーク製作所(兵庫県尼崎市)に勤務し、2016年2月に過労自死した
男性社員は亡くなる4カ月ほど前から法定時間を上回る残業がそれ以前の約5倍に
急増し、月80時間前後の残業が続いたという。 この時期に精神障害が発症した
として、2017年6月に労災認定された。 裁量労働制が適用されていたため
「残業」扱いにもなっていない。

また、同社名古屋製作所(名古屋市)の技術者の男性社員(当時28歳)は、
2012年8月に過労自死した。 2011年にシステム開発プロジェクトの担当に任命
されたが、システムに次々と不具合が発生した。 完成が予定に間に合わず、
遅れを取り戻すために月100時間を超す長時間労働が数カ月続き、精神障害を発症。
2014年12月に労災認定された。

長時間労働による過労死という深刻な事故を起こしながら、同社は再発防止出来ず、
4年間に2人もの過労自死を出したことは極めて重大であり、短期間に長時間労働を
原因とした労災が5件も認定されたことも異常な状況であるため、ノミネートした。

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