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イタリアのボルツァーノ自治県は、イタリア共和国トレンティーノ=アルト・
アディジェ特別自治州に属する県で、県都はボルツァーノ。 イタリアでは
唯一、イタリア語・ドイツ語・ラディン語の3つの公用語を併用する県と
なっている。 歴史的には、「チロル」と呼ばれた地域の一部で、「南チロル」
とも呼ばれている。 この地域では、ドイツ語を母語とするドイツ系住民が
人口の半分以上を占める他、レト・ロマンス語群の言語である、ラディン語の
話者も居るため、地域内での言語事情が非常に複雑となっている。
tirol
1922年にムッソリーニ政権が誕生すると、ボルツァーノ県では、イタリア化
政策が推進されたため、ドイツ語の使用が禁止となり、人名、地名は全て
イタリア語に変更された。

学校教育もイタリア語で行われるようになった他、イタリア南部からの移住も
推奨され、徐々にイタリア語系住民の比率が高まって行った。 1939年、
ムッソリーニは、アドルフ・ヒトラーから、ドイツ語系住民に、ドイツへの
移住か、イタリアに留まり、イタリア人との同化政策を受け入れるかの選択を
させる事を提案され、同意した。 住民は、故郷を捨てるか、母語を捨てるか
という苦渋の選択を迫られた。

第二次世界大戦後期の1943年、イタリア王国が連合国に降伏すると、直ちに
ドイツ軍はイタリア北部を占領する。 ボルツァーノ県域は、名目上、イタリア
社会共和国に属するとされたものの、ドイツ軍の占領統治下に置かれた。
1945年5月のドイツ降伏に先立ち、4月27日にドイツからの独立を宣言した
オーストリアの臨時政府は、1938年の独墺合邦の無効を宣言し、チロル州も
オーストリア領に復した。 ボルツァーノ県の住民も南チロル人民党を結成
するなど、オーストリアへの復帰を望んだが、国際情勢がそれを許さなかった。

1946年9月5日、パリにおいて、イタリアのデ・ガスペリ首相兼外相と
オーストリアのグルーパー外相との間で会談が行われ、同県のイタリア領有、
および、ドイツ語系住民への自治権の付与について合意に達した。 1948年
1月の法律で、自治権が保障されたが、パリでの合意に及ぶものではなく、
ドイツ語系住民にとっては、不十分な内容であった。

また、中央政府が南イタリアからの移住を推進した事に対しても不満があった。
このため、完全自治、あるいは、チロル再統一を要求する組織が作られ、
1950年代半ば以降、テロ活動が続き、1960年代には激しさを増した。
1960年には、国際連合でも議題にあげられ、平和的解決が求められた。


家庭内の会話における使用言語全国
イタリア語のみ、あるいは主にイタリア語45.5%25.2%
地方言語のみ、あるいは主に地方言語16.0%1.5%
イタリア語と地方言語の双方32.5%4.1%
他の言語5.1%65.5%

【ドイツ語】
ドイツ語話者は、県人口の約70%を占める。 2011年の「言語集団調査」に
よれば、県の116コムーネのうち、103コムーネでドイツ語話者が過半数を占める。
住民のほぼ全てが、ドイツ語話者であるコムーネも多く、ドイツ語話者が人口の
90%以上を占めるコムーネが77コムーネ、98%以上を占めるコムーネが
26コムーネある。 マルテッロでは、ドイツ語話者が100%となっている。
 
公文書や教育・メディアなどでは、標準ドイツ語が用いられている。 ただし、
この地域で話されているドイツ語は方言で、県内でも地方ごとに差異があり、
東部はバイエルン人/バイエルン語話者、西部はアレマン人/アレマン語話者が多い。

【イタリア語】
イタリア語話者は、県人口の約25%で、県都ボルツァーノをはじめとする南部に
多い。 2011年の「言語集団調査」によれば、イタリア語話者が過半数を占める
のは、5コムーネで、ボルツァーノ(73.80%)、ライヴェス (71.50%)、
ブロンツォーロ (62.01%)、サロルノ (61.85%) 、ヴァーデナ(61.50%) となって
いる。 これに次ぐのは、メラーノ (49.06%) で、ドイツ語話者と拮抗している。

【ラディン語】
ラディン語は、レト・ロマンス語群の言語で、イタリア語とは同じロマンス
諸語に含まれる。ラディン語話者は、オルティゼーイをはじめとする、県東南部の
ヴァル・ガルデーナ、および、ヴァル・バディーアに集住しており、8コムーネで
過半数(いずれも80%以上)を占める。 2011年の「言語集団調査」によれば、
ラディン語話者が最大の比率を占めるのはラ・ヴァッレ (97.66%) である。
8コムーネ以外では、オルティゼーイに隣接するカステルロットで15.37%を占める。

ラディン語話者はボルツァーノ自治県、トレント自治県、ベッルーノ県に
またがる山間地域に集まっており、これらの地域は、「ラディニア」と呼ばれる。
ラディン語話者は、全体で約3万人とされており、ユネスコの「危機に瀕する言語」
では「危険」と評価されている。 ボルツァーノ県にはこのうち約2万人が
暮らしている。



オーストリアは、長年に渡り、イタリアに対して、ドイツ語話者の多い南チロルの
返還を求めているが、イタリアは、これに応じず、南チロルは、未だイタリア領の
まま現在に至っている。

世界には、このような、国境と言語が一致していない個所が多く見られるが、
むしろ、日本のように、国境と言語が一致している国の方が珍しいのかも知れない。

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