【分類】
雨後のたけのこのように、数ばかり多い翻訳会社なのだが、その実態は、大きく
分けて、まず以下のように分類出来る。
① 言語系翻訳会社
② DTP系翻訳会社
大きな括りで言うところの言語系翻訳会社とDTP系翻訳会社の違いは、どちらに
重きを置いているかの違いだけなのだが、本来の翻訳会社は、言語系翻訳会社しか
存在していなかった。 その後、後発でDTP系翻訳会社がその必要性に応じて
出現した。
【DTP作業】
翻訳作業においては、ほぼ必ずDTP作業も同時に発生するため、言語以外の作業が
不得手な翻訳者にとって、このDTP作業は、非常に苦痛で面倒な作業であった
のだが、中身よりも見た目重視の日本社会においては、そのような不恰好な
見た目では、満足の行く『翻訳の質』とはみなされなかった。 また、言語系翻訳
会社では、DTPが得意な作業者を長年抱えて来なかったため、この部分にはまともに
対応し切れないことが多かった。
その部分に目を付けた後発のDTP系翻訳会社では、中身はさて置き、完璧な見た目で
瞬く間にクライアントの心を鷲づかみにした。 尚、このDTP系翻訳会社には、
印刷系翻訳会社も含まれるのだが、その理由は、DTP系企業は、元々が印刷会社で
あったため。 印刷企業は、紙媒体での需要が激減りする中、積極的に翻訳事業にも
手を出し、今では、どちらが翻訳会社なのかすら分からないレベルにまで伸し
上がった。
【両者の違い】
言語系翻訳会社の場合、その名の通り、言語に重きを置いているため、内容的には
確かなものが多かったものの、付随のDTP作業に完全に足をすくわれて、内容が
おろそかになった企業が多い。 一方、DTP系翻訳会社の場合は、元々、その内容
である、言語には全く重きを置かず、DTPばかりに特化しているため、中身が一切
伴っていないばかりか、そもそも、中身を一切見ないという方針の企業ばかりで
あった。
【クライアントからの注文に応じて変形】
2000年頃までの翻訳会社は、翻訳はするが、DTPはやらないという企業が多かった
ため、クライアントは、翻訳会社に翻訳の依頼をした後に、再度、DTPが得意な
企業を見つけて、DTP作業をして貰う必要性があった。 そこで登場したのが、
後発の翻訳もDTPも一発で請け負う、DTP系翻訳会社なのだが、現在では、言語系
翻訳会社においても、社内にDTPオペレーターを置くのが常識となっており、その
翻訳の中身に大差はないのだが、昔と比較して、自称も含めて、翻訳会社ばかりが
増え過ぎた結果、同じ料金どころか、その半額以下の料金で翻訳とDTPをも受け持つ
形となったため、必然的に、そのしわ寄せは、最下流工程である翻訳者に全て行く
こととなった。
【時代の流れと共に値崩れが発生】
現在、日本の翻訳会社では、語学が得意な社員は、社内には持たないようにして
おり、社外のフリーランス翻訳者に一括丸投げするのが通常となっている。 また、
インターネットの普及により、アジアの爆安翻訳会社にも対抗しなければならなく
なったため、多言語やHTML等の面倒な作業が発生する場合は、海外に全て丸投げ
して、日本国内では、全く作業を行わないという案件が激増した。
【値崩れから価格破壊の時代へ】
2000年頃までは、日本国内に様々な多言語を扱った翻訳会社は、数十社程度しか
存在しなかったのだが、時代の流れと共に、英語のみを取り扱っていた翻訳会社
でも、中国語や韓国語をはじめとした、多言語を扱うようになった。 また、
その頃から、派遣会社が積極的に翻訳事業にも進出し始め、価格破壊が始まった。
更に、大手企業等の大口のクライアントは、毎年複数の翻訳会社に対して、競売を
持ち掛け、積極的に翻訳の値を下げさせた。 翻訳会社側も何とか事業を成立
させるためには、翻訳の値段を下げなければ受注出来ないため、否応なしに、
価格破壊が進んだ。
【言語系翻訳会社とDTP系翻訳会社のブラック度】
言語系翻訳会社と言えども、上記の価格破壊により、語学専門職を社内では抱えなく
なったことと、見た目や低価格にばかりに重きを置くようになった言語系翻訳会社は
少なくない。 それに加えて、英語専門の翻訳会社であっても、多言語を取り扱う
ようになったため、これまでに英語だけを専門として翻訳会社働いて来た人が
このような翻訳会社に入ってしまった場合、その不幸度はかなり高い。
翻訳会社内では、英語を使う機会は稀で、むしろ、DTP作業等の細々とした神経を
すり減らす作業ばかりをやらされるため、英語力を向上させたい人には非常に
不向きな労働環境となっている。 また、DTP系翻訳会社の場合は、翻訳の中身を
見るなとまで言われるため、一体自分が何のために、ここに居るのかすら分からなく
なることがしばしば。 結果として、語学が得意な人は、ものの数ヶ月間で退職する
こととなるのだが、翻訳系ブラック企業のブラックさ加減は、過去のこれまでの
自分たちの数々の間違いを指摘されると、逆に、自分たちの立場がなくなるため、
決して優秀な人材を採用しないところにある。 また、文句を極力出さないという
意味においても、30代前半の女性しか社内に居ないことも最大の特徴となっている。
【翻訳者受難の時代】
派遣会社、海外の爆安翻訳会社との競争、その全てのしわ寄せを強いられている
のが、フリーランス翻訳者であり、これは、全ての翻訳者ばかりには限らず、
全ての通訳者に対しても、同様の現象が起こった。 2000年頃と比較すると、
現在の翻訳や通訳の単価は、3分の1以下程度まで落ち込んでおり、フリーランス
としてまともな生活が維持出来ている翻訳者や通訳者は稀である。 翻訳者の質も
その価格に応じて下がっており、語学専門職で数十年間働いて来たプロの翻訳者
から、ものの数か月間程度通信教育で外国語を習ったことがある程度の
自称翻訳者まで、翻訳者と言えども、その実力差は、天と地ほど大きい。
【今後の展開】
現在、翻訳や通訳業界では、Google翻訳に代表される機械翻訳にも押されており、
更なる価格破壊が起こる可能性が否定出来ない。 日本には、そもそも、語学を
専門職として遂行出来る専門教育機関が設置されておらず、大学における
『通訳・翻訳学部』の設置と、プロとアマチュアの翻訳者の区別をハッキリとさせる
必要性がある。
【お勧めの一冊】
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