東日本大震災で校舎が被災した岩手県大槌町大槌小(児童205人)と岩手県
山田町船越小(児童159人)は、山田町にある県の研修施設
『陸中海岸青少年の家』を一緒に間借りしている。 自治体が異なる2校の
『寄り合い所帯』は、不慣れな施設で可能な限りの教育機能を果たそうと
している。 『授業に支障が出ないように』。 さまざまな制約の中、
教職員らは施設利用の調整に苦心を重ねている。

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学校で何が 寄り合い所帯(岩手・山田町の船越小と大槌町の大槌小)
出典:河北新報 2011年7月9日

朝の登校時間、2校の児童を乗せた9台の通学バスが、続々と青少年の家に
到着する。 2011年7月5日はボランティアの男性が扮するピエロが、皿回しを
披露して出迎えた。 児童は大喜びでピエロに『おはよう』とあいさつし
『校舎』に入った。

『今日は朝から元気いっぱいね』。 大槌小の小野寺美恵子校長(58)は笑みを
浮かべた。 震災前と環境はがらりと変わったが、子どもたちの元気な姿が
学校に徐々に戻ってきている。 2校は校舎が震災の被害に遭い、使用不能に
なった。 それぞれ他校を間借りすることも考えたが、受け入れ人数に限りが
あった。

山田、大槌の両町教委ともに『児童を離れ離れにしたくない』と、一校
丸ごと入れる施設を探した。 たどり着いたのが、大槌小から直線で約7キロ、
船越小からは約4キロ離れた青少年の家だった。

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異例の学校生活は4月下旬に始まった。 2校は青少年の家の体育館や研修室を
間借りしている。 高さ約2メートルの板材の間仕切りや段ボールを使い、2校の
計12学級の教室と職員室のスペースを設けた。

震災前のそれぞれの学校と比べると、不自由さは否めない。 間仕切りが
あっても隣のクラスの声が聞こえ、気になることも多い。 顕微鏡などの
器具がそろわず、理科の実験も満足に出来ない。 体育はグラウンドで行うが、
プールはない。 雨の日は体育館を使いたいところだが、既に職員室や教室に
転用されてしまっている。

子どもたちが落ち着きを取り戻せるように、授業を最優先させたため、船越小は
5月に開催予定の運動会を10月に、大槌小は修学旅行や遠足を2学期に延期した。
『制約は覚悟していた。 それでも工夫し、できる範囲で取り組んでいる』。
船越小の佐々木道雄校長(54)は説明する。

ある学級の音楽の時間には、隣の学級は外で体育の授業。 グラウンドの使用が
重なる時は片方に広く割り当て、もう一方は狭い方を使い、次の機会に入れ
替える。 演奏家や著名人の慰問がある時は、互いに参加を呼び掛けるなど
交流も図った。 『できないこともあるが、この場所だからできることもある』。

2校の校長は口をそろえる。 そんな教育現場の『寄り合い所帯』も今月下旬に
始まる夏休みが明けると、解消される。 大槌小が、大槌町寺野地区に9月に
完成する見込みの仮設校舎へ、被災した同町の小中学校計4校とともに移る
からだ。

町教委の鎌田精造学務課長(50)は『児童や教職員の負担を軽くする意味でも、
一日も早く町内で学校生活を送らせてあげたい』と言う。 残る船越小は
大槌小の移転で、体育館や研修室を広く使えるようになるが、青少年の家での
間借りは少なくとも2012年度まで続く見通しだ。

山田町教委の甲斐谷義昭教育次長(56)は『仮設ではなく、本校舎の新築を
考えている。 少しでも早く建てたい』と強調する。

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