ドイツの首都ベルリンで、イラク難民のザイドさん(23)はスプーンとしゃもじを
手に、グヤーシュ(ハンガリー風シチュー)とジャガイモがいっぱい入った大鍋の
ふたを持ち上げた。 仕事のシフトの始まりだ。

午後6時半から8時まで、ザイドさんはベルリン市に雇用され、スポーツセンターの
ホールに集まるシリアやイラク、アフガニスタン、モルドバ出身の難民152人に
夕食の配膳を行っている。 このスポーツセンターは、新たにドイツに到着する
人々向けの緊急宿泊施設に様変わりした。

ザイドさんはこのビーフシチューに何が入っているのか、いぶかしむような目で
集まった人々に対して説明を試みていた。ザイドさんは『非常にドイツ的』な
シチューだと言う。

自転車の修理や植木の剪定、歩道の清掃といった業務をわずか1ユーロ(約120円)
余りの時給で請け負っているザイドさんのような難民は数千人に上る。 この
いわゆる『1ユーロジョブ』制度は、ドイツの労働市場に新たに加わろうとする
人々の足掛かりとなるとうたわれているが、識者らは以前からその有効性を
疑問視している。

食卓を整え、パンを切り、料理を皿に盛り、そして片付ける。ザイドさんの時給は
1.05ユーロ(約130円)だ。 就労が許されているのは週20時間までと制限されて
おり、月給は頑張っても84ユーロ(約1万300円)にしかならない。 難民申請の
審査結果が出るのを待つ間、当座の生活費として支給される143ユーロ
(約1万7600円)のわずかな足しになる程度だ。

イラクの首都バグダッドから南へおよそ100キロに位置するヒッラ(Hilla)から、
父親と妹と共に半年前に逃れてきたというザイドさん。 月収はドイツ人の平均
賃金に比べればごく少額だが『ドイツ人の配膳ボランティアと触れ合えるので、
ドイツ語を話す機会にもなる』と、喜んで取り組んでいる。 

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■ベルリン市は約3,900人を雇用
難民申請の審査には、数か月とはいわずとも、数週間はかかるケースが多い。
その間、普通の就業は認められていないため、難民申請者らの多くは待ち時間に
うんざりしている。 この問題を回避しようと、当局が活用を決めたのが、この
1ユーロジョブ制度だ。

元は10年前、長期失業者の再就職を後押しする目的で発案されたもので、昨年
110万人という記録的な数に上った難民の受け入れにつながればと活用されている。

ベルリン市は現在、75か所のセンターで生活する3,925人の難民を雇用している。
今後はホームレス支援団体やアルコール依存症のリハビリ施設など、公共サービスを
提供する機関での雇用にも適用を広げたい考えだ。

一方、中部ハノーバー市では新たに同市に来た人々に対し、自転車の修理や寄付
された服の仕分け、幼稚園児の送迎補助といった仕事と引き換えに、ドイツ語教室を
受講できる制度を導入している。

アンドレア・ナーレス(Andrea Nahles)労働社会相は、難民向けにこうした雇用
10万件分を創出すると約束。こういった仕事が、労働市場に参入していくための
『トランポリン』の役目を果たすと説明している。

同国RWI経済研究所の経済学者、ロナルド・バッハマン(Ronald Bachmann)氏は
AFPに対し『難民がこういう形でなければ働けないことを鑑みれば、短期的には理に
かなっている』と述べた。 記録的な数の難民が流入していることに伴い、反移民の
ポピュリズムが台頭する中『彼らに仕事をさせれば、良い政治的シグナルにもなる』
と述べている。

とはいえ、バッハマン氏は、この1ユーロジョブ制度が本来の狙いである長期
失業者の再就職支援で功を奏してきたとは言えない点を指摘し『こういう仕事から
学べることはほとんどなく、労働市場へ戻る一助になることはごくごくまれだった』
と述べている。

出典:AFP

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